伊東電機工作所

建築主
株式会社伊東電機工作所 様
所在地
長野県伊那市横山
施工
株式会社ヤマウラ/新井電気工業株式会社/株式会社マナテック
構造規模
S造・1階
延床面積
1,996.96㎡
竣工
2015年11月
工期
7か月
担当設計士
馬場 成治

5か所に分散した生産機能を、床面積2,000㎡以下の平屋1棟に集約する

本社と4つの工場に分散していた生産機能を1か所へ集約する計画です。限られた事業予算の中で、「建設費に対する生産効率を最大化する」ことを判断軸に据えました。消火設備の基準を読み、床面積を2,000㎡以下に抑えることで屋内消火栓をパッケージ型消火設備に代え、その面積の中に求められた機能を納めています。

1. ご相談の背景

施主様から伺った課題は3点でした。

拠点が分散している。 伊那市内の本社と4つの工場に分かれており、工場間の移動が発生する。生産効率が上がらず、情報共有もしづらい。道路を挟んでの移動があるため安全面にも不安がある。すべての機能を1か所に集約したい。

大空間がほしい。 大型製品に対応できる広さが必要。

作業環境を改善したい。 昭和40年代に建設された建物で、照度や温度に課題がある。

2. 設計前に整理した課題

生産効率が上がらない原因は、拠点の分散とスペース不足だけではありませんでした。動線の問題がありました。

さらに、同社の製品はほとんどが受注生産の一点ものです。そのため生産部門と設計部門の連携が重要になりますが、その連携がスムーズに行える状況ではありませんでした。

3. 設計の判断軸

限られた事業予算の中での計画でした。そこで「建設費用に対する生産効率を最大化する」ことを判断軸に据えています。

床面積の上限を決めたのは、消防法のラインです。消防法では、一定の規模以上になると屋内消火設備の設置が求められます。この建物は準耐火建築物としましたが、その場合は床面積1,400㎡以上で屋内消火設備が必要になります。ただ、平屋で2,000㎡以下の規模であれば、パッケージ型消火設備への代替が認められています。

建設コストを優先して床面積を2,000㎡以下に抑え、屋内消火栓に代えてパッケージ型消火設備を採用しました。延床面積1,996.96㎡は、このラインに納めた数字です。求められた機能をこの面積の中に納めるための調整に、時間をかけています。

4. 比較した案と、採用しなかった理由

柱間隔と生産エリアの平面的な広さの調整を、何パターンも行いました。

構造には、システム建築を採用しています。柱と梁には、かかる力に応じて最適な断面にしたビルドH(鋼板を溶接してつくるH形鋼)を使い、桁行方向の水平力はブレースで負担し、外装もシステムに合わせたものです。ロールH(圧延でつくるH形鋼)を使う在来工法と比べて、鉄骨量を30〜50%ほど抑えられます。

事務エリアと従業員エリアを2階建てにする案も検討しましたが、見送っています。理由は2点です。

  • 建設コストと、生産エリアに求められる機能の観点から、このシステム建築との相性が悪く、コストアップになった
  • 「建設費に対する生産効率を最大化する」という判断軸に結びつかなかった

5. 採用案を成立させた設計

ワンウェイ動線。 作業工程上の交錯が起きない一方向の動線としました。

ホイストクレーン4台。 搬入用・搬出用・生産用として計4台を整備しています。

事務所と製造現場の隣接。 工場と事務所を隣接配置とし、一部を工場側へ張り出させることで、製造現場と事務部門がコミュニケーションを取りやすい配置としました。

働く場所への配慮。 食堂を工場全体が見渡せる位置に配置し、ウッドデッキや植栽を設けて、休憩時間に気分転換できるスペースをつくりました。

多品種少量生産への対応。 大型製品に対応できる広い作業空間を確保しています。

断熱・空調・照度の見直し。 旧工場と比べて断熱性を高め、空調設備を導入し、照度を適正化しました。

6. 設計した将来余地

現在の生産エリアの2倍を増設できる計画としています。増設すると、生産エリアは合計で現在の3倍になります。

7. 完成後

完成後、施主様から、温度と明るさの両面で作業環境が良くなったと伺いました。

8. この計画から得た知見(馬場 成治)

建設工事にあてられる予算と、工場を建てる目的を最初に確認します。この2つの整合が取れていないと、プロジェクトがうまく進みません。

9. 同じ課題をお持ちの方へ

複数拠点に分散した工場を集約される場合、建物の規模を決める前に、次の4点を同時に整理する段階からご相談ください。

  1. 集約後に必要な床面積
  2. 事業予算の上限
  3. 生産動線(材料の搬入から製品の搬出まで)
  4. 将来の増設余地

この4点は互いに影響します。必要面積から決めると予算を超え、予算から決めると生産動線が成立せず、現在の生産量だけで決めると増設余地が残りません。4点を一度に置いて調整することで、限られた予算の中で機能する規模が決まります。

担当設計士

建設会社を決める前に、ご相談ください。

まだ図面も予算もお決まりでない段階で構いません。

敷地、いまの困りごと、いつ頃までに。この3つを伺えれば、考えられる選択肢と、次に決めることをお話しします。

  • 建設会社を決める前の段階からお受けします
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  • 初回のご相談は無料です(調査・診断などは有料です)
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