敷地内に分散していた資材・部品・出荷製品と関係部署を、自動倉庫を備えた1棟に集約する計画です。延床面積は建ぺい率・容積率で決まることが多いのですが、この計画では日影規制による建物の高さの制限が条件になりました。その高さの中に自動倉庫の寸法と各階の高さを合わせ込み、2階建てから4階建てまでを比較して、3階建てを採用しています。









計画敷地に建てられる容積の中で、より効率的な自動倉庫と動線をつくる
1. ご相談の背景
敷地内に複数ある棟ごとに分散保管していた資材・部品・出荷製品と、それに関係する部署を、自動倉庫を備えた倉庫棟を建設して1棟に集約したい。作業の効率化と、資材在庫・製品出荷の管理を進めたい。
現在の工場敷地の続きに取得した計画敷地に、法規制の範囲内で必要な倉庫容量を最大限確保することが求められました。
2. 何が建物の規模を決めたか
延床面積は建ぺい率・容積率によって決まることが多いのですが、この計画では日影規制による建物の高さの制限が条件になりました。
ただ、日影規制から決まるのは、建てられる最大の高さだけです。そこに自動倉庫の幅や高さのモジュールを落とし込み、最適な組み合わせを探しました。この計画では自動倉庫の入出庫口が1階から3階の各階にあったため、自動倉庫のモジュールと各階の階高も合わせて調整しています。
自動倉庫は、大きすぎても入出庫に時間がかかり、かえって時間を失います。最適な平面と高さの寸法は、自動倉庫のメーカーと一緒に検討しました。
3. 比較した案と、採用した案
建物配置と高さ(階数)、自動倉庫の容量、経済スパン(構造とコストのバランスが良い柱間隔)による柱割を組み合わせ、2階建てから4階建てまでの計画案を作成しました。
複数案を比較し、効率のよい実施計画案として3階建てを採用しています。
4. 採用案を成立させた設計
柱を作業動線上に出さない。 経済スパンを心がけながら、資材や製品の保管棚のレイアウトを検討し、作業動線上に柱が出ない柱割としました。
軟弱地盤への対応。 杭基礎を用いる軟弱地盤にあって、自動倉庫やフォークリフトによる重い床荷重(建物の床が支える重さ)の処理が、設計上の要点になりました。
1棟内で工程をつなぐ。 材料・製品の入庫から保管、搬送、出庫までを1棟内でつなぎ、移動の距離、つまり時間のロスを減らす計画としました。各工程を適切にゾーニングし、ミスも減らせる計画です。
上下方向の活用。 上下方向の空間を活用することで、従前の倉庫と比較して建築面積を抑えた計画としています。
5. 完成後
2023年12月に着工し、2025年3月に完成しました。
複数社による競争入札が行われ、予定価格(設計価格)を20%ほど下回る金額で発注されました。
マテリアルハンドリング(工場内でのモノの移動・保管作業)と管理については、効率化・省力化が図れたと考えています。
6. この計画から得た知見(酒井 優)
自動倉庫は建物だけで完結しません。入出庫の運用とシステム要件を、建築計画の初期段階から一緒に整理することが重要です。
7. 同じ課題をお持ちの方へ
自動倉庫の導入を検討される場合、機種やレイアウトを確定する前に、次の3点をまとめてご相談ください。
- 建築条件(用途地域・日影規制・高さ制限など)
- 物流動線(入庫から出庫までの流れ)
- 自動倉庫のシステム要件(各階の入出庫・必要な容量)
日影規制などの建築条件からは、建てられる最大の高さしか決まりません。その中で自動倉庫の寸法と各階の高さを同時に調整することで、大きすぎず、入出庫の時間を無駄にしない最良の自動倉庫スペースを確保できます。