八十二長野銀行 伊那北支店

建築主
株式会社八十二長野銀行 様
所在地
長野県伊那市
構造規模
W造・2階
延床面積
798.08㎡
竣工
2025年7月
担当設計士
酒井 優・馬場 成治

銀行の支店を、用事がなくても立ち寄れる地域の居場所にする

八十二長野銀行 伊那北支店の新しい店舗です。タリーズコーヒーとの初のコラボレーション店舗として、銀行とカフェを1つの建物にまとめました。金融機関に求められる防犯性・信頼性と、カフェの開放性・滞在性という相反する条件を、1つの空間の中で両立させています。長野県産の唐松を現しで使った木造で、最上位区分の『ZEB』を達成しています。

1. ご相談の背景

銀行のビジョンは、「地域の賑わい創出の拠点となる」ことでした。新しい店舗は、「これまで銀行へ足を運びにくかったお客さまにも、気軽に来ていただける場所にする」という考えのもとで検討が進みました。

そこに、タリーズコーヒーの「まちのリビング」という考え方が重なり、銀行とカフェを一体にした店舗の方向性が決まりました。

2. 設計前に整理したこと

金融機関には、防犯性と信頼性が求められます。一方でカフェには、気軽に入れる開放性と、長く過ごせる滞在性が要ります。

この相反する2つを、どう1つの建物に収めるかが、計画の出発点でした。設計の初めから、カフェを銀行と地域をつなぐ接点と位置づけ、金融の機能と滞在の機能を対等に扱っています。

3. 空間の構成

銀行の受付・接客と、カフェを、1つの大きなロビーにまとめました。カフェだけを目的に来た方にも、銀行との接点が生まれます。

金融相談のゾーンと滞在のゾーンは、動線の上では緩やかに分け、見た目には一体に感じられる構成です。安心感を保ちながら、入りやすい雰囲気をつくっています。

ロビーは大きく、外に開かれた空間とし、銀行の受付や案内、セミナー、飲食、滞在が同時に行われても気にならないようにしました。

4. 採用案を成立させた設計

用途の境界を固定しない。 セミナースペースは、開催のない日はカフェの客席になります。縦格子の裏のソファー席は、カフェの利用者がいない時間は商談ブースになります。窓口には可動収納式のカウンターを採用し、カウンター越しの応対から、テーブルと椅子で向き合う対面に変えました。床面積を増やさずに、役割だけを重ねています。

深い軒を三方に低く回す。 西・北・東の三方に、低く長い軒を回しました(軒の出は北と西で1,500mm、東は2,700mm)。周囲の景観から突出せず、雨や雪を防ぎながら人を中へ引き込みます。夏の日射も遮り、『ZEB』の達成に役立っています。

木を現しのまま使う。 柱・梁はすべて長野県産唐松の集成材です。45分準耐火の燃えしろ設計により、多くの人が集まる金融施設でも、構造材を覆わずに見せています。燃えしろ設計は、火災で燃えて失われる厚みを、あらかじめ部材に見込む設計です。

水害への備え。 想定される最大の浸水の深さ3.0mに対し、2階の床をそれより高くして、退避できる場所としています。受変電設備は地面から4.0mの高さに置き、電源を失わないようにしました。

5. 完成後

2025年7月に完成し、9月に開業しました。

開業から7か月で8種類以上のイベントが開かれ、来客数は従前の店舗の約2.2倍になりました。多世代が日常的に集う、地域の拠点になっています。

ウッドデザイン賞2026を受賞しました。

6. この計画から得た知見(酒井 優)

開いた空間にするほど、防犯や安心感とのつり合いが課題になります。空間を壁で分けるのではなく、時間によって役割を変えることで、床面積を増やさずに両方を成り立たせることができました。

7. 同じ課題をお持ちの方へ

店舗や支店の建て替えで、「もっと気軽に来てもらえる場所にしたい」とお考えの場合、間取りを決める前にご相談ください。

防犯や信頼感が求められる用途でも、空間のつなぎ方と、時間による使い分けで、開かれた場所をつくることができます。

担当設計士

建設会社を決める前に、ご相談ください。

まだ図面も予算もお決まりでない段階で構いません。

敷地、いまの困りごと、いつ頃までに。この3つを伺えれば、考えられる選択肢と、次に決めることをお話しします。

  • 建設会社を決める前の段階からお受けします
  • オンラインでのご相談も承ります
  • 初回のご相談は無料です(調査・診断などは有料です)
  • 計画から完成まで、担当設計士が継続してサポートします